【Wikipedia私家訳】「名もなき兵士( חיילים אלמונים / Unknown Soldiers)」
《翻訳者》
真里谷
《元記事》
ヘブライ語版Wikipedia「חיילים אלמונים」
https://he.wikipedia.org/wiki/%D7%97%D7%99%D7%99%D7%9C%D7%99%D7%9D_%D7%90%D7%9C%D7%9E%D7%95%D7%A0%D7%99%D7%9D
[CC BY-SA 4.0 DEED]
https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0/deed.ja#
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《参考他言語記事一覧》
1. ドイツ語版Wikipedia「Hayalim Almonim」
https://de.wikipedia.org/wiki/Hayalim_Almonim
2. スペイン語版Wikipedia「Hayalim Almonim」
https://es.wikipedia.org/wiki/Hayalim_Almonim
3. イタリア語版Wikipedia「Hayalim Almonim」
https://it.wikipedia.org/wiki/Hayalim_Almonim
4. エスペラント語版Wikipedia「Hayalim Almonim」
https://eo.wikipedia.org/wiki/Hayalim_Almonim
名もなき兵士
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
「名もなき兵士」は、レヒの創設者であり指揮官であったアヴラハム・シュテルン(ヤイール)が1932年に書いた歌で、彼の初期の作品のひとつである。シュテルンは妻のロニとともに、この歌に曲をつけた。
この歌は、スピッツァー学校[1]におけるエツェル(イルグン)の地区司令官課程の卒業式典で、当時エツェルの指揮官のひとりだったシュテルンによって初めて披露され、エツェルの新聞である「城塞」に掲載された。この歌は1940年までエツェルの聖歌であり、レヒが分離した後はレヒの聖歌となった。歌詞の中では、国家のために妥協なき犠牲を払う覚悟が表現されている。
歌の構成
「名もなき兵士」は4行ずつの5つの詩節から成り、それぞれの詩節のあとには決まった4行のリフレインを繰り返す。どの節も交互韻を踏むように書かれている。
歌の影響
ナハラト・イツハク墓地にあるシュテルンの墓には、「戦列からの解放は死あるのみ(מִשּׁוּרָה מְשַׁחְרֵר רַק הַמָּוֶת)」という歌詞が刻まれている。
この歌詞は、社会運動「志願兵の戦列(שורת המתנדבים)」の名称の源流を構成する一部となった。
さらに、歌詞のいくつかについて、ロナ・ケナンのアルバム「ヨエルへの歌(שירים ליואל)」に収録の「いばらが棘だったころ(רונה קינן - כשהקוצים היו קוצים)」に引用されている[2]。
歌詞
[Lyrics Source]
Wikimedia Foundation projects
Text at Wikitext: Unknown Soldiers (חיילים אלמונים)
我らは名もなき兵士 制服さえもなく
一面を恐怖と死が取り囲む
皆が生涯逃れられぬ義務とともにあり
戦列からの解放は死あるのみ
残虐と流血の赤き日々
絶望に満ちた暗き夜々
都市という都市に 村という村に 我らの旗を掲げよ
「防衛と勝利」が刻まれし旗を!
我らは奴隷がごとくに 鞭で寄せ集められるにあらず
異国の地で 血を流すためでもない
我らが宿願 それは永遠に自由の民であること!
我らが切望 それは祖国のために死ぬことだ!
残虐と流血の赤き日々
絶望に満ちた暗き夜々
都市という都市に 村という村に 我らの旗を掲げよ
「防衛と勝利」が刻まれし旗を!
すべての同胞には 無数の障害が待つ
残酷な運命が 我らの行く手を妨げる
しかし 敵も 密偵も 監獄も
我らを止めることはできない
残虐と流血の赤き日々
絶望に満ちた暗き夜々
都市という都市に 村という村に 我らの旗を掲げよ
「防衛と勝利」が刻まれし旗を!
たとえ我らが街路で また家々で命を落とし
夜陰に知れず 埋められようと
我らに代わり 幾千もの同志が来たりて
永遠に祖国を守り続けるのだ
残虐と流血の赤き日々
絶望に満ちた暗き夜々
都市という都市に 村という村に 我らの旗を掲げよ
「防衛と勝利」が刻まれし旗を!
子を失った母の涙で
無垢なる幼子の血で
我らが遺骸を凝着させて
祖国を築く礎となる!
残虐と流血の赤き日々
絶望に満ちた暗き夜々
都市という都市に 村という村に 我らの旗を掲げよ
「防衛と勝利」が刻まれし旗を!
外部リンク
- Information about the piece "Unknown Soldiers" on the MusicBrainz website
- "Unknown Soldiers" on the Home for the Hebrew Singer's website
- The lyrics of the song "Unknown Soldiers" and listen to it on the Zmarshet website
- Unknown Soldiers, performed by Shimon Israeli, video on YouTube (August 11, 2024. The video is private)
- Unknown soldiers, in the "Jewish Encyclopedia" on the "Deat" website
- Information about unknown soldiers in the National Library catalog
- Yaira Ganoser, on 'unknown soldiers', 1929-1932, Eyunim in the Israel Uprising 5, 1995, p.497-523
- Hezi Amior, Yair's Unknown Soldiers, on the "Librarians" blog of the National Library, June 24, 2020
脚注
1.^ Ada Amichal Yevin, Bargman, Tel Aviv: "Hadar" Publishing Ltd., 1986, p. 63
2.^ The lyrics of the song "When the thorns were thorns", on the Shironet website
私家訳者コメント
『名もなき兵士(Hayalim Almonim/חַיָּלִים אַלְמוֹנִים)』は、かつて一度翻訳したことがあります。ですが、その時は「ヘブライ語→英語→ドイツ語→英語→日本語」という重訳であり、本来のニュアンスを捉えきれておりませんでした。
〈自作参考資料〉
【歴史/翻訳】『名もなき兵士(Hayalim Almonim/חַיָּלִים אַלְמוֹנִים)』/それは2000年の宿願、ナチス・ドイツとさえ組むことを欲した一部のユダヤ人の狂奔 - note
https://note.com/mariyatsu/n/ndc6370e55e60
特に、彼らにとっては「約束の地」です。"כִבּוּש"は"Conquest"や"Occupy"に対応するわけですが、これらは主要な用法が「征服する」や「占領する(占める)」となります。
ただ、英英辞典で確かめると(何ならぶ厚めの英和辞典で確かめると)、肯定的な意味での「攻撃する」と「従事する」に変わるわけです。作詞したアヴラハム・シュテルンの時代からすれば、「正当な権利をもって、イギリスの帝国主義者をシオンから追い落とす」という決意につながるでしょう。
かてて加えて、1950年代から始まったベングリオン政権に対する社会運動が、この歌を底本としている……。それを考えると、第1節の4行目は「ただ死だけが我らを解放する」ではなく、それは「軍務からの解放」であり、「一生の兵役からの解放」でもありました。
これは当時ロシア帝国領、現ポーランド領で出生したユダヤ人のシュテルンが書く、絶妙な内容に思えます。ロシア帝国といえば、「一生の兵役」ですからね。改革で25年に短縮されたり、代理入隊制度が合法化されたりと状況改善が試みられましたが、結局は志願兵制を諦めざるを得なくなるのです。
「建神論(God-Building)」を放りだして、先にこちらを仕上げました。どうしてもやらねばならなかったのです。
今回の訳でも、私は韻律を再現しきれていません。先のWiki内容の翻訳どおり、ヘブライ語の原文では「交互韻(Alternate rhyme)」が使われています。「A-B-A-B」と、基本的ゆえに力強い響きとなって届くわけですね。
違う言語という性質上、それが困難であるにせよ……。韻律は、劇的な可能性に満ちています。韻律の雄大さは、エントロピーの高さそのものです!
そんな余談を挟みつつ、上記の翻訳をお届けしたことをもって、本記事を締めさせていただきます。
私家訳者補遺/「ヘブライ人歌手の家」について
「ヘブライ人歌手の家(英語:Home for the Hebrew Singer / ヘブライ語:בית לזמר העברי)」は、「イスラエル国立図書館(NLI)」の施策として行われた、ヘブライ人歌手の関わったあらゆる音源や文書を収集および保管するプロジェクトでした。
今回の「名もなき兵士」を含め、20世紀初頭以降の貴重な音源を含めたアーカイブを実施し、3万時間以上にも渡る音源のデジタル化に成功しています。なお、同プロジェクトは2017年から開始し、2022年7月に終了しました。2024年8月現在は、集積したアーカイブはNLIの公式ウェブサイト内にて、「イスラエルの音楽(Isuraeli-music/מוזיקה ישראלית)」という特設ページとして公開されています。